2015/05/09

power of friend with tail

  日本でまだ2頭のファシリティ・ドッグのハンドラーの方のスピーチです。
  動画をご覧いただけない方は、下に書き起こしもしてみましたので
  こちらをお読みください。

  これだけの方でも、ワンコのガンコものは直せないようで、
  ちょっと安心したかも(^_^;)?

  ではでは、ティッシュ、ハンカチを用意してご覧ください(^^)。




皆さん、こんにちは。 森田優子です。
こちらは、ファシリティ・ドッグのベイリーです。

皆さん子供の頃、 注射って怖くなかったですか?

  学校での予防接種。 先に終わった子に
  「痛かった?痛かった?」って、聞いて回りませんでしたか?
  子供にとって、注射とか採血って、ものすごい怖いんですよね。
  入院中の子どもは、何度も何度も採血をします。
  骨髄穿刺と言って、太い針を
  グリグリっと腰の骨に刺す検査が必要な子もいます。
  ここにいるベイリーは、そんな検査も
  「ベイリーと一緒なら、あと百回やりたい。」って、
  子どもに言わせる力を持っています。


日本の医療は、世界で最高水準だと言われています。
でもそれは、病気を治す治療でのことです。

  我慢することを美徳とされてきた日本は、
  入院生活の質を上げるサポートが乏しいと言われています。
  私はかつて、東京のこども病院で看護師をしていました。
  ある日、入院中の子どものお母さんに
  「ここはまるで牢獄ですね。」って言われたんです。
  自分では精一杯子どもたちのことを思って仕事をしていたつもりだったので、
  そんなことを言われて、すごくショックでした。
  でも事実、入院中の子どもは、
  自由に散歩にも行けない。好きな食べ物を持ってきてはいけない。
  楽しみが少ないんです。 笑わなくなってしまう子もいます。
  今思えばそれは、「牢獄だ」と言われても、仕方なかったかもしれません。


そんなとき、私が今所属しているシャイン・オン・キッズというNPO法人から、
ファシリティ・ドッグのハンドラーとして、誘いを受けました。

  日本の小児がん・難病の子どもたち、その家族を
  心の面で、サポートするためのNPO法人です。
  そのときは、犬を子ども病院に連れて行って、
  医療スタッフの一員として、勤務する仕事らしい。
  ファシリティ・ドッグという犬は、欧米にはたくさんいるけれど、
  日本にはまだいないらしい。
  その程度の知識しかありませんでした。
  でも、この病棟に犬がいたら、牢獄と言われた子どもたちの入院生活は
  どれだけ楽しくなるだろう。 ワクワクしました。
  迷わず、「やります!」って言いました。


ファシリティ・ドッグのトレーニングセンターは、日本にはありません。
ベイリーも私もハワイのトレーニングセンターで訓練を受けました。

  ハワイのこども病院で、先輩ファシリティ・ドッグの後をついて回る練習もしました。
  そのファシリティ・ドッグは、重症の患者を集中治療するICU病棟も入って行ったんです。
  そこには、髪の毛を半分剃られ、頭に大きな傷のある手術直後の子がいました。
  つらそうに顔をしかめていました。
  こんな大変なときに行っていいのぉ~と心配する私をよそに、そのファシリティ・ドッグは
  体じゅうに管の付いたその子のベッドに乗って、添い寝を始めたんです。
  すると、その子の表情がフゥ-っとゆるみました。
  体を動かすのは辛いはずなのに、その犬に抱きついて目を瞑ったんです。
  本当に安心した表情になりました。
  それを見て、「すごーい!」って思いました。
  私も病院中を笑顔にできるぞーと思って、ベイリーを連れて日本に帰ってきたのですが
  それまで日本には、ファシリティ・ドッグなんていません。

  欧米と日本では、犬に対する感覚が違うんですよね。
  欧米では、犬は家族の一員として家の中で飼うのが当たり前の文化でした。
  でも日本は、犬を外で飼ってきた歴史があります。
  「犬を病院の中に入れるなんて」というのが、日本の病院の感覚だったんです。
  それまで日本にも、時々ボランティアで、病院にやってくる犬達はいました。
  でも、”犬を毎日病院の中に入れる” ”犬を医療スタッフの一員として考える”
  という感覚がなかったんです。
  ”ハワイではこうだった”は、日本では全く通じません。

  私たちは、ベイリーを受け入れてくれる病院を必死で探しました。
  ようやく受け入れてくれたのが、静岡県立こども病院でした。
  でも実際活動を初めて見ると、

    「犬型ロボットじゃダメなの?」
    「感染症が心配だからこの病棟入らないで」・・・

  初めは入れる病棟はひとつしかありませんでした。
  だから、一日の仕事は、数分で終わりです。
  出勤してきた一時間後には、もう退社です。
  日本ではファシリティ・ドッグは受け入れられないのかなぁ~と
  私の頭には不安しかありませんでした。


でも、子どもたちは、ベイリーを求めていたんです。

  5年が経った今では、ほとんどの病棟に入れるようになっています。
  ベイリーがいると、子どもたちと家族に良い変化があるんだと、
  医師や看護師が気付き始めていったんです。

  ある目の見えない子は、採血ときはいつもパニックになって泣き叫んでいたのに
  ベイリーがとなりにいて、頭を撫でながら採血したら、泣かずにできました。
  手術後、痛くて動こうとしなかった子が、ベイリー会いたさに、
  ガバッと起き上がって医師を驚かせました。

  突然、「あなたのお子さんは癌です。」と宣告されたご家族。
  家族は、子どもが不安になるので、子どもの前では気丈に振る舞います。
  でも、ずっと自分の気持を押さえ込んでいると、いつか限界がきます。

    泣くことも大事なんです。

  そこにいる相手が人間だと「何か喋らなきゃ・・・」と思います。
  でもベイリーには、無理に喋る必要はありません。
  あるお母さんは、廊下でベイリーを抱きしめて、思いっきり泣いて、
  すっきりした表情で、子どもの元に戻って行きました。
  ベイリーは家族にも、大きな効果があったんです。


私は、ファシリティ・ドッグにとって、大切な3つの絆があると気づきました。
”ベイリーと子どもたち” ”ベイリーとハンドラー” ”ベイリーと医療スタッフ”
この3つの絆です。


一つ目の絆は・・・
  ベイリーは毎日同じ病院で仕事をしているので、何度も同じ子に逢います。
  子どもたちにとって、ただ犬がいればいいんではありません。
  毎日来てくれるベイリーだからいいんです。
  絆で結ばれているベイリーだから、がんばろうって思うんです。
  初めは犬嫌いだった子も、ほとんどの子はベイリーを好きになります。

    子どもたちにとって、ベイリーは
    『共に戦うシッポの生えた仲間』なんです。

  ベイリーは、子どもと一緒に手術室まで行くことも出来ます。
  大人でも、手術を受けるのって怖いですよね。
  痛いのかなぁ・・・怖いなぁ・・・って。 病棟から手術室まで、
  子どもにとっては恐怖の時間です。
  でもベイリーのリードを持って一緒に歩くと、「こっちだよー」って
  ベイリーを誘導しながら、笑顔で歩いていきます。
  手術室までのお散歩は、みんなのベイリーを独り占めできる時間です。
  ベイリーのふさふさしたシッポに、猫のようにじゃれつきながら歩く子もいれば、
  「シッポでがんばれーって言ってるね(^^)。」って嬉しそうに笑う子もいます。

  こうして、怖い気持ちが楽しい気持ちに変わって、
  手術室に向かっていきます。


二つ目の絆。

  ファシリティ・ドッグとハンドラーは、24時間、生活を共にしています。
  お休みの日も、いつも一緒です。 これが大切で、そのときだけ一緒で、
  仕事が終わったら「じゃぁバイバイ」では、ダメなんです。
  私とベイリーは、夜は腕枕して一緒に寝ているんですよ。
  ファシリティ・ドッグとハンドラーの絆。
  これが、ファシリティ・ドッグが仕事をする上では基盤になります。
  私との絆があるから、ベイリーは私を信頼して、仕事をしてくれるんです。
  でも実は、トレーニングを受けた犬というと、
  なんでも言うことを聞く犬と思われがちですが、
  ベイリーは困ってしまうほどのガンコ坊主です(^_^;)。
  行きたい方向にしか進みません。 行きたくないほうにはこうです。
  すっごい踏ん張ってるの、わかりますか?
  ガッと足を広げて、爪を立てて、行きたくない方向には絶対に進みません。
  散歩中も道に座り込んで、私がこうベイリーと格闘していると「大変ねぇ」って
  道行く人に笑われています。

  でも、病院に行くのをイヤって言ったことは一度もありません。
  逆に帰るときには、「まだ帰らない」座り込んで、
  また病院の中に戻っていってしまいます。
  犬は、相手が自分のことをどう思っているのか、すぐに感じ取れます。
  自分のことを愛してくれる人がたくさんいる場所。
  だから、ベイリーも病院が大好きなんです。
  人と犬と相思相愛。 これがファシリティ・ドッグの真髄だと思います。
  愛情のやりとりのない犬のぬいぐるみではダメなんです。 
  ロボットではダメなんです。


ベイリーと医療スタッフ。 これが3つ目の絆です。

  ファシリティ・ドッグのハンドラーは、医療従事者です。
  なぜ、医療従事者がハンドラーになるのでしょうか。
  それは、ファシリティ・ドッグは癒やしだけでなく、治療にも関わったいるからです。
  私とベイリーは、患者さんの治療方針を決める話し合いの場に参加することもあります。
  その場で私も患者さんの状態を把握して、その子に合わせた関わり方を考えていきます。
  カルテへの記載もします。
  この目的をもって関わっていくということが、ファシリティ・ドッグにしかできないことであり、
  ハンドラーが医療従事者である理由でもあります。


私とベイリーが日本で仕事を始めて5年が経ちました。

  これまでに何千人もの子どもたちとの出会いがありました。
  病状が悪化していき、ご飯が食べられなくなってしまった終末期の子がいました。
  食べたいけれど、食べられない。 そんな状態でした。
  残された時間が少ないなかで、家族も看護師さんも、
  なんとか少しでも食べさせてあげたかったんです。
  そんなとき、「ベイリーと一緒にご飯を食べたらどうか?」と提案がありました。
  ベイリーと一緒だと笑顔で一緒に座りました。 そして、
  「ベイリー見ててねぇ。」と言って、ほんの数口ではありましたが、
  自分でスパゲッティを掴んで口に入れたんです。
  アイスクリームもパクパク食べました。 いやいやではなく、楽しそうに。
  その場にベイリーがいるだけで、これだけ変わるんです。

    「ベイリーに会いたいから、入院したい。」って子どもに言わせるほど、
    病院のイメージが変わるんです。

ベイリーと一緒だと楽しい気持ちは倍増。悲しい気持ち、怖い気持ちは半分個です。

  ほとんどの子は、元気に退院していきます。
  でも、残念ながら、お星さまになって旅立っていく子もいます。
  お空に旅立つ直前まで、ベッドで添い寝することもあります。
  「ベイリーがとなりにいるの、わかるでしょう。 あったかいねぇ」って。
  悲しいけれど、あたたかい。 そんな時間が流れています。
  お子さんのご葬儀に参列させていただくこともあります。
  火葬場で最後に棺の蓋を閉めるときのご両親の気持ち。 想像してみてください。
  でもご家族はいつも、ベイリーがいてくれて本当によかったって、言ってくれます。
  ベイリーがいなかったら、辛いだけの入院生活だった。
  ベイリーが来て、ガラッと変わったって、言ってくれます。

  子どもを亡くしたご家族は、その後の長い人生のなか、
  毎日その子の事を思い返します。
  ”何度も手術をして痛い思いをして、かわいそうだった”って、思い返すのと、
  ”亡くなる前に、ベイリーと添い寝して、くっついて笑ってたっけなぁ”って
  思い返すのとでは、気持ちが全然違いますよね。
  ほんのすこしでも、辛い思い出の中に、楽しい思い出も創れたらいいと思います。
  ひとつでも多く、その子の笑顔を思い返して欲しいです。

  ファシリティ・ドッグは、”いたらいいな”の存在ではなく、
  必要な存在なんだと強く感じています。


世界最高水準だと言われている日本の医療。
ただ、病気を治すだけでなく、
もっと前向きに病気を治せる環境が必要だと思います。

  患者さんにとって、楽しいこと、嬉しいことは、いくら多くてもいいんです。
  欧米にはたくさんいるファシリティ・ドッグ。 日本にはまだ2頭です。
  ファシリティ・ドッグがいて当たり前の日本。
  入院しても楽しいことがある日本の病院にしていきたいです。

  ほんとうにたくさんの可愛い子どもたちが、
  お星さまになって私たちを見守ってくれています。
  あの子たちに、自信を持って「いい病院になったでしょう(^^)。」と言える
  日本の医療現場にしていきたいと思ってます。
ちょっと書き起こしてみました(^_^;)            

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